読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ハチドリのとまる場所。

大好きな本のこととか日々の考えなど、あれこれ。

オーバー・フェンス。

先日、調子がよかったので、もう何年ぶりなのかもわからないくらい久しぶりに連れ合いと二人で新宿まで映画を観に行った。映画のタイトルは『オーバー・フェンス』。大好きな作家、佐藤泰志の小説を原作とした映画で、この作品が映画化されることを知ってか…

日常と不在を見つめて。

どうも体調がわるい。ことしは厄年(本厄)で、しらべてみると体力低下やホルモンバランスの変化で体調を崩しやすくなるらしい。信じるとか信じないとかいうよりも、ちょうど人生も折り返し地点に入ったことを考えると、たしかにそういうこともあるのかもし…

尾崎一雄の癖。

この時期になると、持病のぜんそくがひどい。寒さと乾燥と花粉にやられる。朝からゲホゲホ、昼間もゲホゲホ、夜中もゲホゲホ、身体の休まる暇がない。そこへもってきて古本のホコリがまた悪い。黒っぽい本は特に悪い。職場でゲホゲホ、書斎でゲホゲホ、業者…

ムーミンとスイッチ。

インフルエンザで幼稚園をお休みしている末っ子と一緒に『楽しいムーミン一家』を観ていたら、じぶんのスイッチが入りっぱなしになっていたことに気づいた。海のように広いムーミンママの言葉に心をつかまれながら、エネルギーのむだづかいを悔やむ。 ムーミ…

じぶんの持ち場。

まいにち本ばかり読んでいて、あたまでっかちにならないのかと訊かれることがあるけれど、たぶんなっているとおもう。少なくとも、思弁的な枠組みと他力本願につくった仕事上の仕組みがぶっこわれて、じぶんもぶっこわれそうになったあの日までは。 どちらか…

ピート・ハミルな夜。

あれこれ考えすぎて眠れない夜がある。 頭を冷やすといい、という話を聞いたことがあったのを思い出し、冷凍庫からアイスノンを取り出す。朝までぐっすり眠れるようにと祈るような気持ちで明かりを消す。一時間後、冷えた頭であいかわらずあれこれ考えている…

好きなものを見つける。

息子が野球をはじめて、ちょうど4ヶ月になる。親に似てダラダラとした生活を好む子だったのだけれど、野球をはじめてからは、いくぶんまともなリズムで生活を送れるようになった。 じぶんから「どうしてもやりたい」と頼んできただけあって、早朝からの練習…

山田稔さんのこと。

きょうも暑い。とにかく暑い日が続いているけれど、家にいるときは熱中症にならないように気をつけながら、できるだけクーラーはつけずに過ごす。なんのためというわけでもなく、ただのケチ根性だけで実践している。 自然の風だけが頼りなのに、窓際に置いた…

いちべついらい。

少し前に、詩人・田村隆一の妻、田村和子さんをスケッチした、「いちべついらい 」(橋口幸子 著)という本が夏葉社から出ると知り、今か今かと心待ちにしていた。 いまから4年くらい前に読んだ、詩人・北村太郎のことを描いた「珈琲とエクレアと詩人」(201…

だらだらと本を読む。

日曜日。いつもよりゆっくりめに起きて珈琲を淹れ、パジャマのまま、だらだらと好きな本を開く。 昨日の夜から読みはじめた荻原魚雷さんの新刊『書生の処世』(2015年6月 本の雑誌社)を読み終え、ふと時計を見ると昼になっている。もうこんな時間かとおもい…

うちのめされる読書。

日中は暑さを感じる日が多くなったけれど、日が沈むとまだ肌寒い。掛け布団の調整がむずかしく、汗ばんだり、寒さで夜中に目が覚めたりと、睡眠が安定しない。それでも体調はすこぶるよく、身も心も平和な日が続いている。そういうときは、読書がはかどる。 …

善悪の彼岸へ。

目にも止まらぬスピードで日本が走っているのに、不思議なくらい世の中は静かなような気がする。静かすぎてこわい。こういう場所でこういうことを云うのは得意じゃないのだけれど、「戦える国づくり」に向かって急ピッチで国のトップが独走しているのに、世…

絶望のガム。

ガムと呼ばれる絶望を踏んだ。植え込みの周りにならぶ大きな石や、縁石の角など、あちらこちらで払拭を試みてはみたけれど、まったくだめだった。道端にしゃがみこんで、木の枝でほじくってもみたけれど、ぜんぜんとれない。やればやるほどに気が重くなる。 …

忘れられた巨人。

きょうは母の日。でかけている連れ合いが帰ってくる前に、子どもたちを中心とした定番のカレーづくりをした。おいしい、おいしい、と喜んで食べる母親の姿に、子どもたちは満足の笑みを浮かべながら、皮むきやアク取りなど調理の過程を声高々に説明する。ど…

九勝六敗。

きょうは休日出勤をしたあとで、午後から末っ子さんとぶらぶら散歩をした。彼女と散歩をしていると、普段なら全く気にもとめないような、見過ごしてしまいがちな小さなあれこれにピントが合わせられる。それは、土筆であったり、かたちのよい石であったり、…

洲之内徹と救済。

感冒のせいで、ひどく咳がでる。だいぶん落ちついてきたとおもったら、またひどくなった。咳はつかれる。頭にもひびくし、あちこちの筋肉にもひびく。まさに全力疾走といった感じで、くたくたになる。こういうときは、おとなしく家で本でも読んで、ごろごろ…

ストーナー。

ふと振り返って人生について考えてみるとき、仕事と恋愛の占める割合、その比重がじぶんにとって決して小さくないことに気づく。それが溺レルほど夢中になって向き合うような対象であればあるほど、比重はどんどん増大する。 柄にもないことを云うようだけれ…

理想の生活。

今朝つくったおかゆの出来が、なかなかよかった。水と火の加減がよかったのかもしれない。うちで食べている福島のお米は冷えてもおいしいのだけれど、おかゆにしてもおいしいことがわかった。これなら体調に関係なく、普段おかゆを食べる習慣はないけれど、…

ハチドリのひとしずく。

人生というのは、なかなかスマートにはいかないものだなとつくづくおもう。 やっとのことで手に入れたかのようにおもえたものも、掌で掬った砂のように、さらさらと指のあいだから零れおちていく。 それでも、いくらかは残る。 零れていく砂をあわてて掬おう…

ふつうの妥協点。

ずっとやめていた煙草をまた吸うようになった。もったいない、とよく言われるけれど、ぼくにしてみれば休煙していたこの6年間のほうがもったいなかったとおもう。 煙草そのものをガマンするのはなんでもないことなのだけれど、煙草を吸わないことでガマンせ…

はみだしものでかまわない。

あまりにあれこれありすぎて、何をどうすればよいのかよく分からない、そんな時期がしばらく続いていた。雷雨のような数ヶ月だったけれど、決っして乗り越えようとはおもわなかった。そんなときは、そんなときにしかできないことを考えたり、そんなときだか…

戸越銀座でつかまえて。

仕事のことであれこれ考えなくてはならず、時間はあるのに余裕がない。そういうときは、とにかく好きなものを好きなだけじっくり読む。読んで、読んで、また読み返す。 ついこのあいだ出たばかりの星野博美さんの新刊『戸越銀座でつかまえて』(2013年 朝日…

読書という糧。

少し前にも書いたのだけれど、ここ三ヶ月くらい仕事に関する本ばかりを中心に読み漁っている。そういった、目的をもって得るためにする読書というのは、それはそれで楽しく、何らかの糧になっていることをおもって嬉しくもなる。 だけど、そんなとき、一方で…

死の淵を見た男。

2011年3月11日、東日本を襲った大地震と大津波により、福島第一原発は史上最悪の事故に見舞われた。そんな未曾有の出来事に翻弄されつづける中、使命感と郷土愛に貫かれ、文字通り死を賭して闘う人たちがいた。福島第一原発所長として最前線で指揮を執った吉…

老いたるえびのうた。

あたたかい日が続いたかとおもえば、急にぐっと冷え込む。衣がえのタイミングがうまくつかめず、気をつけてはいるのだけれど、子どもたちはすぐに体調を崩す。予定していたお出かけはできなくなり、そのことを子どもたちに伝えると、えびのように身体をくね…

プロの仕事。

ぼくの職場には、よく研修生さんたちがくる。研修を終えた彼らの反省会をするとき、ぼくは必ず「プロとアマの違い」について訊ねてみる。人によって「プロ」についての捉え方はまちまちだけれど、その答えの多くをまとめてみると大体こんなふうになる。「要…

ライスカレー。

昨日がカレーだったので、きっと今晩もカレーライスだ。もしくはカレーうどん。わが家ではカレーはつづくものと相場が決まっている。他のメニューであれば文句を云いたくなるところだけれど、カレーなら許せてしまう。そして決まって二日目のカレーのほうが…

生活の展開。

数ヶ月前、近所のブックオフで「小林秀雄全作品1 様々なる意匠」を見つけ、行くたびに買おうかどうかと迷っていたのだけれど、没後三十年特集などを読んでいたら無性に欲しくなってきた。さて、いざ買おうと決心してお店に行ってみると、いつもあったはずの…

ペソアの詩集。

ここ一週間ほどひどく体調がわるく、本を読むことさえもままならないような日が二日ほど続いた。病院に行っていくつかのつらい検査をしてきたのだけれど、とりあえず大事に至るようなことはないらしく、安堵した。どうなったっていいようなものだけれど、子…

物語のこと。

友人が最愛の奥さんを失くした。亡くなった奥さんは、ぼくの友人でもあった。子どももまだ小さく、これからというときなのに、彼女は憎き病魔に冒されこの世を去った。なんでわたしが、といって泣き崩れる彼女を支える友人もまた、よりによってなんでうちが…

一日の長さ。

ここのところ、一日がひどく長く感じられる。 ついこのあいだまでは一日があっというまに終わってしまい、ひどく短く感じられていたのに。といっても、時間の流れが遅遅として進まないから退屈している、というわけではない。たっぷりと時間があるので、仕事…

本と別れる時のマナー。

まだ正月気分がぬけきらず、どこか気持ちが浮ついている。昔から場面のスイッチをするのがヘタクソで、そのせいか周囲からとりのこされてしまうことがしばしばあった。それでも子どもの頃はまだよかったのだけれど、社会人となった今はいつまでもそんなこと…

冬と本の科学反応。

ついこのあいだ買ったばかりの、「冬」と「本」という二つのキーワードからなるアンソロジー『冬の本』(2012年 夏葉社)が想像以上によかった。一度読み終えてからも身近なところに置き、パラパラと頁をめくっては無作為にひらいたところを再読している。お…

想像力について。

ここのところ、想像する、ということについてよく考える。 小さい頃、あれこれ想像してみることが大好きで、ひとり想像の世界に遊んでいた。想像することは自由だし、その世界における可能性は無限大にある。現実と可能性が世界の内にあるのか外にあるのかな…

志賀直哉と一疋の蜂。

仕事の関係で、死をテーマにした話を人前ですることがある。 つい先ごろにもそんな話をする機会があって、その参考資料として志賀直哉の「城の崎にて」の一部を引用した。正宗白鳥や高見順の書いたものにもとてもいい一節があるのだけれど、ぼくにとって死を…

オリーヴ・キタリッジの生活。

なんどいっても子どもがおもちゃを片付けずイライラする。チームワークを無視し続ける仲間に失望する。何食わぬ顔で割り込み乗車をする中年女。ちいさなつまずき、些細な言動、たっぷり寝たはずなのに疲れがとれない。そんなときに子どもがくれる、「パパす…

島へ免許を取りに行く。

ぼくは彼女のことを、心の中でこっそり「視角のひと」と呼んでいる。 その卓越した視角に烈しく身を焦がし、ときに烈しく嫉妬する。キモチを切り替えたいときや、迷子になりそうなとき、ぼくは彼女の烈しい視角を頼りに自分を取り戻そうとしている。 視角の…

井伏鱒二の鯉。

なんだかしらないけれど、ちょくちょく微熱がでてしんどい。 むりをしているわけでもないし、睡眠時間もたっぷりとっている。それなのに、やっとよくなったかとおもうとまた微熱がでる。こういう季節の変わり目というのは、なかなかキモチとカラダが伴ってこ…

荒地の恋。

「荒地の恋/ねじめ正一 著(2007年 文藝春秋)」という、詩人の評伝のような味わいのフシギな小説を読んだ。中央公論文芸賞を受賞しているこの作品、文学好きなひとの間でも当時からずいぶんと話題になっていた。買いそびれたまま数年が過ぎ、2年くらい前…

吉行淳之介と喉仏。

仕事柄、ひとの死に目、つまりは生と死の境目に会うことが多い。 ベッドに横たわる老人の傍らに立ち、目を瞑ったまま不規則な呼吸をくり返すその姿を、ただ見つめる。微かにうごく喉仏と、ほんの僅かに上下する布団を、ただ見つめる。 《文字どおり骨と皮だ…

切断力。

仕事にしても遊びにしても、グループで一つことをするというのはムズカシイ。みんなで同じ一つの方向にむかってすすんでいるつもりでも、目指すカタチやそれぞれのオモワクが違っていたりすると、グループは惰性的で緩慢な流れになるか、歯車のズレた険悪な…

藤枝静男のひたむきさ。

連れ合いが少し体調を崩したので、手間のかかる料理をのんびりと作りながら、藤枝静男の随筆をいくつか読んで静かに暮らした。 《私はその日に買った道具屋で気に入った朝鮮民画の花鳥を持ってたずねた。「つまらないね」といわれるかも知れないが、しかし案…

つきあい。

まいにち本を読んで暮らしていると、読了後のよろこびよりも、たった一行に出合えたよろこびに舞い上がることのほうが多くなってくる。こうした、たった一行、たった一言のためだけに買ったのだとおもえるような文章(書き手)に出合えるというのは、そう度…

気乗り。

文章を書くのにも、本を読むのにも、ここのところなんとなく億劫で気が乗らない。およそどんなことをするにしてもそうなのだけれど、気乗りがしないと何事もはじまらない。だらだらと時間だけが過ぎていく。たとえ気乗りしないままやりはじめたとしても、た…

眠れぬ夜に。

夜中に目が覚める。 寝返りを一つ打ってから、足もとに丸まっているタオルケットを鼻の先まで引き寄せる。何も考えないようにして、ぎゅっと目を閉じてみる。けれども、閉じた瞼にあれこれ映りこんでちっとも眠くならない。懐かしさや後悔、楽しさや淋しさが…

橋をかける。

少し前に書いたばかりの“でんでんむしのかなしみ”を巡って、ちょっとした偶然があったのでびっくりした。その少し前にも偶然の結びつきについて書いたばかりだったので、なんだかよけいに驚いてしまった。 あいおい文庫には、ひと月に何度かまとまって本が届…

でんでんむしのかなしみ。

ぼくは文学系の朗読CD(むかしはソノシートやカセットテープで聴いていたっけ)を聴くのが大好きで、うんと小さい頃からよく聴いている。昼間に聴くということはあまりなくて、たいていは深夜に枕元でかけたまま眠ってしまうことが多い。優しくゆったりと…

せんせい流。

ここのところ気持ちがくさくさしていたので、百鬼園せんせいの随筆をつづけざまに数冊読んだ。こういうときは酒よりもなによりも、せんせいの随筆を読むに限る。 ≪執達吏と一緒にやつて来た債権者の金貸しが、あなたは独逸語の先生だから、独逸の本とか字引…

東峰夫さんのこと。

本が好きだ。本が好きだという人も好きだし、その人の言葉も同じように好きだ。 ≪よい本はじっくりと読む。すると思考は刺激をうけて誘発される。読んでは書き、書いては読む。それがよい本なのである。一週間、二週間と時間をかけて、読むこともする。 読む…

お茶わん一パイのメシ。

永島慎二の「フーテン(1972年 青林堂)」というまんがを読んでいたら、伍一という登場人物(走っている車から飛び降り、対向車に轢かれて死んでしまう)の書いた落書きにグッときた。 お茶わん一パイのメシ お茶わん一パイのメシを おれは食えなかったこと…