ハチドリのとまる場所。

大好きな本のこととか日々の考えなど、あれこれ。

冬のにほひ。

ストーブを買った。
寒さには強いほうなので、オイルヒーターで幾冬も越してきたのだけれど。
ストーブの燃料はやっぱり灯油に限る。
地震やコストや健康のことなどを考えれば時代遅れなのかもしれない。
だけど、あの灯油の燃える匂いをかぐと「今年も冬がきたんだな」と思える。
連れ合いが、ストーブの前にしゃがみこんで「冬のにほひがするね」などという。
ぼくは「そうだね」と笑う。
冬のにほひ。
小学校の教室を思い出す。
大きな曲がりくねった煙突のあるストーブ。
おっかなびっくり火をとぼす。
点けても一時間目はまだ少し寒い。
二時間目が終わる頃にようやく暖まる。
教室ぜんたいが暖まってくると、ぼうとして眠くなる。
うとうとしながら、なんとなく淋しい色のしんとした窓の外を眺めていたあの頃。
あたたかな教室と霜の降りた校庭。


ストーブを買った。
ぼうっ
ストーブに火がとぼる。
あたたかくなるには、まだ時間がかかる。
熱い珈琲を淹れよう。
珈琲のかほり と 冬のにほひ 。
どちらに包まれても、本が読みたくなる。
寒い日に暖をとって本を読む幸せ。
着ぶくれして、丸くなって、ストーブの前で本を読む。
冬の読書はいい。
春もいいし、
夏もいいし、
秋もいい。
でも、冬の読書が一番いい。
冬のにほひが身も心もあたためてくれるから。