ハチドリのとまる場所。

大好きな本のこととか日々の考えなど、あれこれ。

待ち合わせは本屋さん。

親しいひとと待ち合わせをするとき、どうぞ決めてくださいと言われれば、ぼくはたいてい最寄りの本屋さんを待ち合わせの場所に指定する。目的地からそう離れていなければ、迷わず古本屋さんにする。ただし、古本屋さんを待ち合わせの場所として決めると、ワクワクしながら向かったその先で肩透かしを食うことがある(臨時休業や閉店などの理由で無常にもシャッターが下りていたりする)ので、じゅうぶんな事前の下調べが必要となる。とにかく、ここでならひどく待たされるようなことになっても腹が立たないし、むしろ相手が少し遅れて来るくらいでちょうどいい、とすらおもえる。もしそこが文芸書や人文書のコーナーの充実したお店であれば、小一時間くらい待ったって屁でもない。


なんでこんなことを書くのかというと、このあいだ実際に一時間以上待たされるということがあり、その仕返しに、というわけではないけれど店内で余計に三十分待ってもらうという出来事があったのだ。じっくり時間をかけて吟味し、昭和の小説と随筆とで四冊、迷いに迷って(ちょっと値が張る)外国のフォトグラファーの写真集を一冊購入した。そんなこんなで正味 100分くらいは店内にいたことになるのだけれど、ぜんぜん苦にはならなかった。待ち人の心中はともかくとして、待ち合わせの場所を本屋さんにしておいて本当によかった。もしこれが駅前での待ち合わせだったらどうだろうか。しかも風が強く、矢のような雨が降っている日だったら、とおもうとぞっとしない。


気に入った本を数冊購入し、カバンの中のうれしい重みを肩に感じながら、意気揚々と目的の呑み屋を目指して歩く。気の合った友人とうまい酒を酌み交わしながら、ときどきチラリとカバンの中身に視線を送る。ながいながい待ち合わせになったけれど、ぼくにとってこの上ない至福の時間となった。