悩むということ。
何を信じたらよいのか分らなくなるようなことがあり、ここのところ少し落ち込んでいた。いや、今もまだその渦中にぼんやりといるのだけれど、ナントカカントカ毎日をそれなりに送っている。
今年もあと7週間弱で終わってしまうが、だからといって自分の中の何かが決定的に終わりになるというわけでもない。まあ、年末年始という年の切り替わりは、決して忘れてはいけないことと、きれいさっぱりと忘れて新しい出発をしなくてはならないこととの整理ができる重要な節目ではあるのだけれど。2011年は本当にたくさんのことが回り合わせ、たくさんの人が不安と混乱のどん底へと叩き落された。時の流れとともに不安は安堵へと変わっていくものだけれど、今もまだ続く多くの不安と失敗から目を逸らすことなく、ぼくらは切り替えの整理をしていかなくてはならない。
話が脱線してしまったけれど、今こうして落ち込んでいることにも節目というものはあり、必ず終わりも来る。何事もなかったようにまた新しい明日はやってくるのだ。そう考えれば、いまこうしてクヨクヨと悩んでいることなんて、長い旅路の途中で小石に蹴つまずいた程度のことなのかもしれない……が、その渦中にあると長い旅路の途中にあることなんて忘れてしまう。というよりも、引いて見るということができなくなる。目の前のことで精一杯になってしまう。灯りの乏しい目の前の道を手探りで歩くことになる。つまずくし、ぶっつかるし、ころぶ。這いつくばって道を探し、出口を求め、途中で声を上げて助けを求めてみたりもする。
- 作者: 山口瞳
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/01/12
- メディア: 単行本
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ここのところ山口瞳のエッセイ「男性自身シリーズ」を耽読している。近所の古本屋さんの店頭台にどっさりと出ていたのでまとめて買ってきたのだ。この間にまったく別の本も数冊買ってはいるのだけれど、めずらしくわき目もふらずにこれだけを読み耽っている。まるで医者に処方されたかのように毎食後きちんきちんと服用し、これがまたよく効いているらしく、ちょっと調子がよい。人生のたいていのことはこのシリーズの中に詰まっているので(ちょっと言い過ぎかな)、一冊読めばどこかしら心に落ちる。書かれた言葉が海辺の砂粒のように形を変えて肌にまとわりついてくるのに、決して押し付けがましくないところがいい。背中をそっと押してくれる心地よさ。
人生の先輩たちの多くが通ってきたであろう道を、大人なのか子どもなのかよく分らないような中途半端なぼくが追っかけて歩く。どんな心持で歩き、どんな方法で納得してきたのか、または納得できないまま引きずっているのか。先輩たちの声に耳をすませることで、今日も安心して悩むことができる。悩めなくなった人生なんてつまらない。そんな気持ちになる。