ハチドリのとまる場所。

大好きな本のこととか日々の考えなど、あれこれ。

友人と猫と写真。

猫はあまり好きではない、どちらかといえば敬遠したい、ずっとそんなふうにおもっていた。うっかり化けて出られたらたまらないし、できるだけ遠巻きに暮らしたいと。幼い頃からそうおもっていたにもかかわらず、いつのまにか猫もわるくないなとおもうようになっていた。よくよく観察してみると、けっこうかわいいじゃないか、なんて。思慮深いのか、それとも何も考えていないのか、そんなどっちつかずのしれっとした態がどうにも気にかかる。自分に都合のよいときだけ甘えるような狡猾さが捨ておけない。本能の赴くまま、ついつい一心不乱に遊ぶ姿に親近感がわく。とはいえ、好ましいというほどの存在では、やはりない。


猫についてなにか書こうと考えてはみたものの、さっぱりなにも思い浮かばない。猫についての本だってとんと読んでいない。そもそも猫にまつわる思い出みたいなものなんて、なにもない。幼い頃のぼくは、黒猫を見かけたら(宅急便のあのトレードマークでさえも)三歩さがってお辞儀をし、そのまま反対方向を向いて一目散に走って逃げていた。勝手にそういうおまじないをつくって、ぼくのところへ化けて出ませんようにと真剣に祈っていた。だから猫に関する話なんてなにもない。それでもしいていうならば、数年前から父が猫を飼いはじめ、しかも擬人化するくらいに溺愛しているということくらいだろうか。ぼくと同じように、少し前までさほど猫が好きだというわけでもなかったはずなのに、今ではいなくなってしまったらどうしようかと、こちらが心配するくらいに大きな存在となっている。やはり父も、いつのまにか猫もわるくないなとおもうようになっていたらしい。猫って、むむむむむ…


以前、古い友人が猫の写真展を開いた。職場からそう遠くないところだったので、帰りがけにちょっと寄ってみた。どんな写真を撮っているのかな、というくらいの軽い気持ちで見にいったのだけれど、実際に見てみて、なるほど、とおもった。なるほどそうきたか、と。ぼくにとっての猫は、わるくないな、というくらいだったし、いつも身近なところにいてほしいなんてことも、もちろんない。少し離れたところにいるのを、そうっと遠めに観察するくらいがいい。ところが、フレームの中にすっぽりとおさまるその姿は、ただただ好ましかった。かわいいとか、癒されるとか、そういうのではない。そこには猫のためだけの場所と時間が100%あって、よくわからないけれど奇妙にねっちりとしたアリガタイセカイが数十点切り取られて並んでいた。それをなんと表現したらよいものか考えてみたのだけれど、うまい言葉が見つからない。ただただ好ましい、そうとしか言いようがない。そしてフシギなことに、帰り道では身近なところにいてほしいとさえおもうようになっていた。猫って、写真って、むむむむむ…


さて、この古い友人というのも、実はそれほど猫が好きだというわけではなかったのに、気がついたら猫を追っかけて写真を撮るようになっていたらしい。いつのまにか猫もわるくないなと。やっぱり猫って、むむむむむ…


小沢竜也 写真展「おつかい」◆招き猫か?化け猫か?それはあなたの行い次第…
 【場 所】相生の里1F(東京都中央区佃3−1−15) 相生の里 - Google マップ
 【期 間】2013年8月24日〜9月12日まで(10:00〜18:00)
 【入 場】フリー


*撮りおろし作品、約40点を展示します。