ハチドリのとまる場所。

大好きな本のこととか日々の考えなど、あれこれ。

島へ免許を取りに行く。

ぼくは彼女のことを、心の中でこっそり「視角のひと」と呼んでいる。 その卓越した視角に烈しく身を焦がし、ときに烈しく嫉妬する。キモチを切り替えたいときや、迷子になりそうなとき、ぼくは彼女の烈しい視角を頼りに自分を取り戻そうとしている。 視角の…

井伏鱒二の鯉。

なんだかしらないけれど、ちょくちょく微熱がでてしんどい。 むりをしているわけでもないし、睡眠時間もたっぷりとっている。それなのに、やっとよくなったかとおもうとまた微熱がでる。こういう季節の変わり目というのは、なかなかキモチとカラダが伴ってこ…

荒地の恋。

「荒地の恋/ねじめ正一 著(2007年 文藝春秋)」という、詩人の評伝のような味わいのフシギな小説を読んだ。中央公論文芸賞を受賞しているこの作品、文学好きなひとの間でも当時からずいぶんと話題になっていた。買いそびれたまま数年が過ぎ、2年くらい前…

吉行淳之介と喉仏。

仕事柄、ひとの死に目、つまりは生と死の境目に会うことが多い。 ベッドに横たわる老人の傍らに立ち、目を瞑ったまま不規則な呼吸をくり返すその姿を、ただ見つめる。微かにうごく喉仏と、ほんの僅かに上下する布団を、ただ見つめる。 《文字どおり骨と皮だ…

切断力。

仕事にしても遊びにしても、グループで一つことをするというのはムズカシイ。みんなで同じ一つの方向にむかってすすんでいるつもりでも、目指すカタチやそれぞれのオモワクが違っていたりすると、グループは惰性的で緩慢な流れになるか、歯車のズレた険悪な…

コロッケ。

なにもない道 とぼとぼ歩いていたら なんでもいいから買いたくなって ちかくの肉屋でコロッケをひとつ またとぼとぼ歩きながら コロッケの入った袋を鼻に寄せる うん、肉屋のコロッケの匂い そんなに食べたいわけじゃなかったけれど せっかくなので、がぶり…

藤枝静男のひたむきさ。

連れ合いが少し体調を崩したので、手間のかかる料理をのんびりと作りながら、藤枝静男の随筆をいくつか読んで静かに暮らした。 《私はその日に買った道具屋で気に入った朝鮮民画の花鳥を持ってたずねた。「つまらないね」といわれるかも知れないが、しかし案…

つきあい。

まいにち本を読んで暮らしていると、読了後のよろこびよりも、たった一行に出合えたよろこびに舞い上がることのほうが多くなってくる。こうした、たった一行、たった一言のためだけに買ったのだとおもえるような文章(書き手)に出合えるというのは、そう度…

気乗り。

文章を書くのにも、本を読むのにも、ここのところなんとなく億劫で気が乗らない。およそどんなことをするにしてもそうなのだけれど、気乗りがしないと何事もはじまらない。だらだらと時間だけが過ぎていく。たとえ気乗りしないままやりはじめたとしても、た…

夏の終わりに。

幼いころから、自分のための誕生会がキライだった。終わったあとのぽっかりとした淋しさがどうしてもいやだった。さっきまで仕合せの絶頂にあったはずなのに、オジャマシマシタの呪文が唱えられるやいなや突如としてセカイの果てまで弾き飛ばされる。たえら…

眠れぬ夜に。

夜中に目が覚める。 寝返りを一つ打ってから、足もとに丸まっているタオルケットを鼻の先まで引き寄せる。何も考えないようにして、ぎゅっと目を閉じてみる。けれども、閉じた瞼にあれこれ映りこんでちっとも眠くならない。懐かしさや後悔、楽しさや淋しさが…

神輿を担ぐ。

心が折れそうになったとき、掛け声、笛の音、足音、鼓動に支えられた。 重みで腰が折れそうになると、心も折れそうになる。 汗と雨とかけられた水が、流れる涙に混じって滴り落ちる。 もうやめよう、なんどもそうおもった。 おもったはずなのに、笛の音が聞…

友人と猫と写真。

猫はあまり好きではない、どちらかといえば敬遠したい、ずっとそんなふうにおもっていた。うっかり化けて出られたらたまらないし、できるだけ遠巻きに暮らしたいと。幼い頃からそうおもっていたにもかかわらず、いつのまにか猫もわるくないなとおもうように…

ここんとこ読んだ本(二)。

ここんとこ読んだ本で、こころにおちた本シリーズ。 「無階級の人々」ジョージ・ギッシング 著(1998年 光陽社出版) 「阿佐ヶ谷日記」外村繁 著(1961年 新潮社) 「頭の洗濯」吉田健一 著(1960年 文藝春秋新社) 「こんな日もあるさ」上原隆 著(2012年 …

NUU(ぬぅ)のこと。

今から10年以上も前に、なんとなく入った町の小さなCDショップで、なんとなく手にとって買ったCDが、NUU(ぬぅ)の1stアルバム「うたうの」だった。そこからずっと好きになり、どのアルバムもみんな買うようになった。彼女のアルバムには、大切な…

オグラ&ジュンマキ堂 ライブ。

平成25年9月8日(日)13:00〜◆オグラ(インチキ手廻しオルガン) 1965年静岡県生まれ。高校生の時、ラジオで聴いた友部正人の歌に驚愕。 1985年より青ジャージ、1998年より800ランプのVoとしてバンド活動。 2002年より自作の「インチキ手廻しオルガ…

UWF 関東学生プロレス。

平成25年9月8日(日)14:00〜◆関東学生プロレス T.W.F.東海大学プロレス連合創設者アントニオ寺島を中心とし、U.W.F.関東学生プロレス連盟が発足したのである。 現在も多くの大学が加盟し、レスラー・マネージャー・関係者含め総勢約20名から成る、…

NUU ライブ2013。

平成25年9月8日(日)15:30〜◆NUU(ぬぅ) '98年4月早稲田大学在学中にデビュー。 シングル5枚、アルバム6枚、DVD2枚をリリース。 類いまれな唄声と温かな人柄でぐんぐんと観客を巻き込むNUUのライブは東京を中心に、沖縄、奄美大島等、全国各地で…

あいおい納涼市。

あいおい文庫の“夏”といえば、すっかり「あいおい古本まつり」と「あいおい納涼市」のイベント2本が定番となりました。この定番というのはうれしいもので、たまに会った人から「例のやつ、そろそろですね」なんて云われたりすると、なんだかんだでナントカ…

橋をかける。

少し前に書いたばかりの“でんでんむしのかなしみ”を巡って、ちょっとした偶然があったのでびっくりした。その少し前にも偶然の結びつきについて書いたばかりだったので、なんだかよけいに驚いてしまった。 あいおい文庫には、ひと月に何度かまとまって本が届…

でんでんむしのかなしみ。

ぼくは文学系の朗読CD(むかしはソノシートやカセットテープで聴いていたっけ)を聴くのが大好きで、うんと小さい頃からよく聴いている。昼間に聴くということはあまりなくて、たいていは深夜に枕元でかけたまま眠ってしまうことが多い。優しくゆったりと…

偶然の結びつき。

人がなにかを選ぶとき、その過程の中で“偶然”に出合ったり激しくぶっつかったりして、なにか目に見えない強引なチカラに巻き込まれるようにして決まってしまうことがある。たとえばアメリカの作家で詩人のポール・オースターの場合、おもわず口元が綻んでし…

せんせい流。

ここのところ気持ちがくさくさしていたので、百鬼園せんせいの随筆をつづけざまに数冊読んだ。こういうときは酒よりもなによりも、せんせいの随筆を読むに限る。 ≪執達吏と一緒にやつて来た債権者の金貸しが、あなたは独逸語の先生だから、独逸の本とか字引…

ある日。

……きょう買った一冊の詩集より ある日 会社をさぼった あんまり天気が よかったので 公園で 半日すごして 午後は 映画をみた つまり人間らしくだな 生きたいんだよぼくは なんて おっさんが喋っていた 俳優なのだおっさんは 芸術家かもしれないのだおっさん…

東峰夫さんのこと。

本が好きだ。本が好きだという人も好きだし、その人の言葉も同じように好きだ。 ≪よい本はじっくりと読む。すると思考は刺激をうけて誘発される。読んでは書き、書いては読む。それがよい本なのである。一週間、二週間と時間をかけて、読むこともする。 読む…

お茶わん一パイのメシ。

永島慎二の「フーテン(1972年 青林堂)」というまんがを読んでいたら、伍一という登場人物(走っている車から飛び降り、対向車に轢かれて死んでしまう)の書いた落書きにグッときた。 お茶わん一パイのメシ お茶わん一パイのメシを おれは食えなかったこと…

本を読む理由。

先日、本をつくる仕事をしている人たちとお酒を飲んでいて、なんで本なんか読むのか、というような話になってそこそこ盛り上がった。 それはもちろん本が好きだからに決まっているのだけれど、このあいだもこのブログに書いたように、本を読むとき、ぼくはも…

気分の悪いはなし。

宿酔いで気分が悪い。若い頃は深酔いすると朝っぱらから(ヘタをすれば夜中からずっと)気分が悪かったものだけれど、最近は筋肉痛のように時差攻撃をしかけられるようになった。そんなわけで昼過ぎくらいからどうにも気分が悪くて困っている。 さて、気分が…

ここんとこ読んだ本。

ここんとこ読んだ本で、心におちた本シリーズ(ってことは続くのかな?) 「貧の達人」東峰夫 著(2004年 たま出版) 「心の小筥」直井潔 著(1982年 神戸新聞出版センター) 「悲しきカフェ」河原晉也 著(1988年 沖積舎) 「ばれてもともと」色川武大 著(…

散木としての生き方。

何日か前にラジオを聴いていたら、作家で妖怪研究者の荒俣宏さんがとても興味深いはなしをしていた。うろ覚えだけれど、たしか荘子と散木のはなしだったはず。 ちなみに、この「散木」というのは、材木としては役に立たない木のこと。曲がっていたり、節が多…